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REPORT

第1回 アーキリードトラベリング

活動報告

Posted on 2013.8.23 Last Update 2019.12.3 Author Organizer Tag アーキリード

去る7月26日(金)に第一回アーキリードトラベリングとして気温35°を超える猛暑の京都にて「小沢朝江教授(日本、近代建築史専門)と共にめぐる京都日本建築視察ツアー」を15名の参加者により敢行いたしました。ツアーはサバティカル制度で京都に半年間ご滞在中の小沢朝江教授に引率を頂き、平成の大改修中の清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場、建築家藤井厚二の自邸聴竹居、水無瀬神宮灯心亭を巡ったのち鴨川沿いの納涼床にて京料理に舌鼓といった夏の京都を堪能する充実した内容でした。

JR京都駅新幹線中央改札前にて集合。なかには十何年ぶりという顔もあり、地方に散らばったOBとの懐かしい再会もアーキリードトラベリングの存在意義であると実感いたしました。清水寺市営駐車場まではタクシーにて移動しました。

清水寺市営駐車場到着後は、35°を超える猛暑のなか、ひたすら歩いて本堂を目指します。

清水寺本堂へ
清水寺本堂へ

まずは本堂の見学から
小沢先生の明快な解説を堪能できるのもこの旅ならでは!!!

小沢朝江教授による解説の風景
小沢朝江教授による解説の風景

さてここで、小沢先生からお知恵をひとつ「建立時期を知りたければ、金物(ギボシ)に注目すれば書いてあります。」 清水寺は何度も火災により焼失し、現在の本堂は寛永10年(1633)に徳川家光の寄進により再建されました。

金物(ギボシ)
金物(ギボシ)

「清水の舞台」は本堂の前にせり出した構造で、「懸造(かけづくり)」といわれます。本日見学の奥院は本堂の縮小版的建物であり同様のつくりになっています。

清水寺
清水寺

小沢先生曰く、清水寺本堂の美しさはその屋根にあり。なるほど側面からみると正堂、礼堂、翼廊と前へ前と伸びていく様が見てとれます。このようにして増築に次ぐ増築を繰り返し、さらにはそれを再建するという行為によって様式は確立されていきます。

清水寺本堂
清水寺本堂

いよいよ、清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場(写真中央の素屋根(仮設屋根)の掛かっている建物)に向かいます。清水寺では、平成20年から「平成の大改修」を行っています。8つの重要文化財と国宝「本堂」を総工期11カ年、総予算40億円を懸け順次修復しています。阿弥陀堂は建物の傾斜が生じているほか、床下部材に白蟻による被害がみられることから、半解体修理を行います。なお、外陣部分については解体し、地盤強化、礎石の据え直しを行うほか、塗装の塗り直しなどもあわせて行う予定だそうです。奥の院は檜皮葺の経年劣化のほか、小屋梁の折損、彩色・塗装の汚れや経年劣化が著しいため、小屋梁まで解体する半解体修理を行い、あわせて彩色・塗装の塗り直しを行う予定だそうです。なお、舞台部分については平成17年度に修理済のため、今回は工事を行いません。

清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場1
清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場1

一般の解体作業見学はできません。今回は小沢先生の尽力により、特別に内部の解体状況の見学が可能となりました。

清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場2
清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場2

清水寺には京都府教育庁の文化財保護課の人々が常駐し、9名の宮大工、2名の建具師を中心としたチーム「京都府工務店(笑)」で遂行されています。また今回の現場視察のご案内も忙しい作業の手を休め、丁寧にご説明いただきました。

京都府教育庁の文化財保護課の方による解説風景
京都府教育庁の文化財保護課の方による解説風景

このように図面や写真を拝見しながら、解体作業の進行具合や修復箇所の説明をして頂きました。因に、写真内の左手が解体前の平面図で右手が修復後の平面となります。今回の修復ではかなり大胆な改修が行われ、なんとご本尊の位置が前面に移動するのだそうです。

解体作業の進行具合や修復箇所の説明
解体作業の進行具合や修復箇所の説明

実際の修復技術はもちろんのこと、もうひとつの見所は仮設足場です。現代では鉄パイプが主流になった工事の足場も、伝統を残すために敢えて昔ながらの丸太と番線で組んでいるそうです。修復完了後に取り払ってしまうのが惜しいくらいに美しかったです(笑)写真手前が阿弥陀堂で奥に見えるのが奥の院です。

仮設足場
仮設足場

修復作業は、虫食いや痛みの激しい部分を取り除き、新しい木材で埋めたり継いだりして出来るだけ元の部材を生かした修復をされているそうです。隅木に注目してください。寸分の隙間もないくらいに接ぎ木されており、その技術の高さに圧倒されます。

修復の解説風景
修復の解説風景

今回の旅でのキーワードとして「ハネギ/桔木」についての説明がありました。(実はこの後の聴竹居にてこの桔木が出て参ります。)写真内の太い丸太がそうです。日本建築の美のひとつとして大きく跳ね出した軒があげられますが、桔木とは、軒先を支える為に使われる部材であり、桁を支点として左右で天秤のようになって軒先を吊っています。

桔木(ハネギ)
桔木(ハネギ)

我々が視察中も職人さん達は作業をされていました。暑い中ご苦労様です(汗)

修復の風景
修復の風景

ひねり金物やかすがいなど割と金物が使用されているのが意外でした。

修復に使われていた金物
修復に使われていた金物

奥の院の礼堂からの眺めです。素屋根が取り払われると本堂のベストショットポイントとなります。

奥の院の礼堂からの眺め
奥の院の礼堂からの眺め

足下を覗くと、なるほど奥の院が本堂の縮小版と言われる所以がわかります。本堂に比べると小規模ながら、ちゃんと「懸造(かけづくり)」となっております。なお、舞台部分については平成17年度に修理済のため、今回は工事を行わないそうです。

懸造(かけづくり)
懸造(かけづくり)

時間にして1時間半ものあいだ、貴重なお話がたくさん伺え、ツアー前半にもかかわらずみなさんお腹一杯のご様子です。素屋根の下ともいえど、お暑い中みなさんご苦労様でした!この後は京都駅にもどり昼食を済ませて、在来線に乗って「聴竹居」に向かいます。

修復現場見学終了風景
修復現場見学終了風景

京都駅にて昼食を済ませた後、在来線を使ってJR京都駅からJR京都線山崎駅に向かいその後は徒歩で、建築家藤井厚二の実験住宅「聴竹居」を目指します。

聴竹居の入口
聴竹居の入口

藤井厚二は「その国を代表する建築は住宅建築である」と謳い、ここ大山崎の約12,000坪の土地に次々と実験住宅を建て「聴竹居」は5つ目の自邸であります。

聴竹居
聴竹居

建物の説明をボランティアスタッフの方にしていただきました。藤井厚二は自ら興した環境工学を基礎とした方法論を駆使し、環境共生住宅としてこの住宅を設計したそうです。一番の見所はこの庭に面した縁側と名付けられたサンルームです。縁側と名付けられたように、この大きな開口部(引違ガラス戸)によって構成されており、夏涼しく冬は暖かい環境が実現されています。出隅部は突き付けの嵌め殺し窓になっていて庭への眺望を阻害されることがありません。日本の気候にあわせて庇も大きく張り出している訳ですが、不思議なことにこの部屋を構成する壁面には一切の柱がありません。そうです。清水寺阿弥陀堂・奥院 解体修理現場でお勉強した「ハネギ/桔木」によって屋根を張り出しているのです。

聴竹居・サンルーム
聴竹居・サンルーム

縁側の天井は、網代で仕上げられ、換気用スリットが2カ所設けられています。足下の開口部から天井裏へと空気が流れ、室内の換気が行われます。室内環境への気配りが80年前に竣工した住宅に備えられていたのには驚かされました。

聴竹居・縁側の天井
聴竹居・縁側の天井

さらには、居間に面した部屋の仕切りには必ず欄間が設けられ、各部屋への空気の流通に配慮しているそうです。またその他にも床下に設けられたクールチューブなど積極的に新鮮で冷たい外気を室内に取り入れる工夫がされていました。

聴竹居・室内
聴竹居・室内

お次ぎは「聴竹居」を後にして、近隣の水無瀬神宮内にあります「燈心亭」に移動しました。こちらは残念ながら写真撮影が不可であります。どのような建物かと申しますと、後水尾上皇御遺愛の茶室、三畳台目の本席と水屋からなり、入側縁が西から南に廻る。寄せ棟造りの茅葺きの庵(※配布パンフレットより抜粋)ここは、趣のあるお庭に面したせいもあり、たくさんの蚊による襲来を受けました。

全ての見学コースを終え、懇親会の会場のある先斗町へと向かいます。

先斗町
先斗町

夏の京都の風物詩といえば、鴨川沿いの納涼床ではないでしょうか。小沢先生の計らいにより、リーズナブルに床が楽しめるお店をご紹介いただきました!17~19時までの席でしたので暑さが心配されましたが、鴨川をそよぐ風と冷たいビールで心地よい夕暮れを堪能いたしました。

鴨川沿いの納涼床
鴨川沿いの納涼床

みなさんお暑い中ご苦労様でした。今日はたくさん歩いたのでさぞかしビールが美味いでしょう!

懇親会
懇親会

これをもって第1回目のアーキリードトラベリング報告を終了致します。第1回目からこんなに盛り上がりを見せるとは正直思っておりませんでした。ですが、新旧の先生方、OBの方、地方でなかなか逢えない方、現役学生と
メンバーも多彩で楽しくお勉強のできる良い旅行であったと自負しております。また突撃訪問という身勝手な企画にも関わらず、多方面にご尽力いただいた小沢先生にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。これに味を占めて第2回、3回と企画を立てていきますので、今回残念ながら参加のできなかったみなさんも次回は振るってご参加ください!!!